去る1月18日〜20日の日程で、世界遺産の厳島神社を訪れました。

ことの発端は、昨年5月に参加した「華の会 竹生島研修旅行」です。家族で研修旅行に参加させていただいた
我が家では、せっかく昨年の丑年5月に竹生島へ行ったのだから、あとの日本三大弁財天をお参りしましょうと
いう目標を作りました。
1月・5月・9月参りに合わせて、昨年9月には神奈川県にある「江ノ島神社」を参拝し、年が変わって今年の1月
に三大弁財天詣での締めとして、二泊三日で厳島神社へ行く運びとなりました。

せっかくの機会なので、なんとなくフィーリングで行くよりも、しっかり勉強して歴史と見所を抑えてから行程を組む
ことになり、出発前に宮島関連の本を読みあさりました。その甲斐もあり、宮島にも外宮が在ることや、様々な歴
史的エピソードを知り、期待に胸膨らませての出発となりました。
旅立ちの日の早朝、ふと自宅の窓の外を見ると、三羽の白鷺が華麗に羽ばたいて行く姿が・・・・・。幸先が良いの
では。
東京から新幹線で揺られること約4時間、広島駅で電車を乗り換え、途中駅でさらにローカル線に乗り換えて、最
初の目的地で宮島の対岸にある地御前神社(じごぜんじんじゃ)へ向かいました。地御前神社は厳島神社の外宮
とされ、宮島へ人が入れなかった古い時代に、神様をお迎えして祭祀を行っていたようです。
海に向かって建つ鳥居とお宮も、今はご本殿のすぐ後ろにJRが、鳥居の前には広島電鉄が走っており、雰囲気は
やゃ雑然としていますが、ご本殿は厳島神社とほぼ同じ造りということで一見の価値はありますし、海を向いてひっ
そりと建つお宮に昔の名残を感じさせてくれます。

この後いよいよ船で海を渡り、念願の宮島へ・・・・。
船上から眺める大鳥居が徐々に近づいてくると、はるばる宮島へやって来たのだと感動もひとしおです。
船を降りて島へ入ると、可愛い鹿がお出迎えしてくれます。宿にチェックイン後、さっそく大鳥居の見学へ。
夕闇にどっしりと美しくそびえる大鳥居。鳥居を見てこんなにも心を打たれたことは未だかつてありません。干潮の
浜辺で遠く波間を望み、紅い鳥居が静かに佇む様は、この世のものではないかのようです。
大鳥居の一番太い柱は、もともと他の神社の御神木だったそうです。御神木を伐らねばならぬという事で、御神木
を奉った神社側でも相当の協議が重ねられたそうですが、最後に厳島神社の大鳥居になるならば・・・ということで
話が決まったようです。しかし御神木を伐るというのは断腸の思いだった事でしょう。様々な想いを背負って、神々
しくそびえ立つ大鳥居には深く感銘を受けます。

宿に戻って宮島の海の幸をたっぷり頂いた後、先に予約を入れておいた屋形船へ乗船しました。屋形船はガイド
さんの興味深い話を聞きながら揺られて行き、潮位の恵みで、船で大鳥居をくぐることができました。船で大鳥居
をくぐるのが厳島神社の正式な参拝です。幸運にも、この日は唯一大鳥居をくぐる屋形船に乗ることができました。
大鳥居をくぐる前に、船は静かに左へ一回旋回します。襟を正すように、とても厳粛な気持ちになります。
正式には三回廻ってから大鳥居をくぐるのだそうです。
数時間前には歩いて足元まで行かれた大鳥居を船でくぐるのは、全く異なる視点でこれもまた感動的です。
最後に船のお土産にお杓文字を頂戴して、一日目の行程は終了です。


二日目は朝早くまだ暗いうちに宿を出て厳島神社へ。
開門したばかりの神社へ一番乗りしました。早朝の身を切るような寒さにも、神職の方は淡々とお宮を掃き清め
ておられます。私達は徐々に明けていくほの暗さの中、回廊を順に周り神前で祈りを捧げました。
まだ観光客が来る前、早朝の本当に静かな厳島神社に身も心も洗われるようです。
ゆっくり参拝しているうちにすっかり空も明るくなり、お宮の細部もよく見えるようになりました。意匠を凝らした丹塗
りのご本殿はどこを眺めても美しく、海に浮かぶ桃源郷さながらです。


こんなに麗しい厳島神社も立地上、天災に見舞われるのは宿命的であり、数多くの災害を乗り越えてきました。
先の大型台風の時には、神職の方たちが海へ飛び込んで損壊した木材をかき集めたり、それこそ各時代の人々
が必死に守り通してきたのです。
また、明治の神仏分離の際には、仏教色の強いご本殿を焼き払ってご神体を海に流すよう命じられ、時の神職の
最高位の方が決死の覚悟で政府へ嘆願に向かったという歴史もあります。
いま私たちの目の前に穏やかで優美な佇まいを見せてくださる厳島神社は、数え切れない程の困難を、厳島の大
神様をお慕いする人々の力で乗り越え維持されてきたのです。
目に見えるものだけではない、世界遺産にふさわしい誇り高き神社です。

厳島神社の参拝を終えて、午前中はレンタサイクルで周辺の摂社・末社を参拝して回りました。宮島には本当に
たくさんの神社が在ります。島の裏側には船でしか行かれない神社もあり、いつか全て参拝してみたいものです。
宮島を自転車で走り回った後は、厳島神社の背後にそびえる神体山の弥山(みせん)の山上へロープウエイを乗り
継いで登りました。
ロープウエイを降りてから、次は厳島神社の奥宮の御山神社(みやまじんじゃ)へ。弥山の山道はゴロゴロと岩や石
も落差が多く、思っていたよりも本格的な山歩きです。息も切れ切れに辿り着いた天空のお宮は、真っ青な空に紅い
小さなお社が三社。空気は美味しく眺めも良く清々しいひと時でした。


御山神社で二日目の行程の神社は全て参拝終了。取り急ぎ下山して厳島神社の隣に在る大願寺へ。
大願寺には秘仏の厳島弁財天がおわします。閉門時間ギリギリに大願寺へ滑り込み、この時期お姿はお隠れに
なっていますが、無事に参拝することが出来ました。

暗いうちに起きて厳島神社参拝、午前中は自転車で島内を飛び回り、午後は弥山で山登り。最後に弁財天をお参
りして、恐ろしく体育会系の一日でしたが、滞りなく参拝尽くしの二日目でした。
この日は宮島の老舗旅館である岩惣(いわそう)に宿を取り、皇族や名士、文豪など多くの方に愛されてきた歴史
ある旅館で、レトロな雰囲気のなか古き良き時代に想いを馳せてゆっくり休みました。
最終日、あっという間に島を発つ日が来てしまいました。もう一度厳島神社へお参りして、この度の参拝旅行の感謝
を申し上げ、周辺の摂社・末社もお参りして、最後に高台の要害山(ようがいさん)から宮島の街並みを眺めていたら
名残惜しくなってしまいました。
かなり凝縮して行程を組みましたが、見きれなかった有名な社寺がまだまだ沢山あり、宮島の奥深さを改めて感じつ
つ、船で島を離れました。

生まれて初めての宮島は、感動的なエピソードの数々に泣かされっぱなしでしたが、天気も良く海も穏やかで、食べ
物も美味しかったです。
まだまだ発掘できる見所がたくさんあると思うので、次の機会の楽しみにとっておきたいと思います。
日本三大弁財天をまわる旅も無事に終える事ができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
                                                  (池袋中級A教室  K・Wさん)